昔は「電化製品の禁忌」というのがありまして、「電子レンジとトースターを同時に運転するとブレーカーが落ちる」とか、各家庭により組み合わせがいろいろあったと思います。炊飯器が途中で落ちると大変でした。今は調理器具の全体に占める「電気エネルギー」の比率も増え、ブレーカー容量も上がっているのだと思いますが、そういうことは全く聞かなくなりました。
それでも木工機械を見ると、バンドソーや角ノミあたりで700~800W、テーブルソーや自動カンナで1000Wか1500Wはごく普通にありますから、同時に照明を付けたり集塵機に回したりしていると、電圧降下が発生し、照明が暗くなり回転数が落ちる、あるいは、起動時や重切削時に「プッチン」とブレーカーが落ちる、ということが往々にしてあります。
(1)電圧降下
電圧降下は、細く長い配線を電気が通る場合に、その抵抗分によって電圧が降下してしまう現象です。
銅線の抵抗なんて数Ωじゃないのかと思う方もいるかも知れませんが、交流でのインピーダンスとか言うのを考慮すると無視できないんだそうです。詳しくないので松本さんオススメのサイトを引用しますが、計算は下記に従うと計算できるそうです。
http://www.hst-cable.co.jp/products/pdf/P75-84.pdf
ここでは、正確に計算するよりも定性的な理解をする方が有用と思いますので、
「IV,裸線の場合はこれでもよい」とされている簡略計算式の方で見てみますと、
電圧降下(V)= 35.6 × 電線長[m] × 電流[A] / (1000 × 断面積[sq]) (単相2線式)
なるべく引き回す配線長さを短くし、断面積を稼げば改善できることが読みとれます。
また、100Vよりも200Vラインで配線した方が電流が約半分になることが期待できますので、有効です。
(2)ブレーカー
ブレーカーは、最近の家であれば個室には20Aのブレーカーを配置するのが一般的なようです。電力(W)は電圧(V)と電流(A)の積なので、100Vなら合計で2000Wくらいの機械を同時に回せると言うことです。但し、起動電流もありますので、それ以下で落ちるケースもありますしそれ以上でも行けるケースもあります。電流ブレーカーは電流値(A)を検知しますので、200Vでも20Aと書いてあれば20Aで作動します。この場合は4000Wくらいまで回せる計算になります。
趣味の木工では、作業場が屋外、あるいは自宅の一室、離れの工房・・・、と作業スタイルは各人で異なると思いますが、機械が揃ってくるにつれて、電源ラインが100V1本だとストレスがたまることになると思います。下記に考えられる対応を挙げます。
(a)電源ラインを複数確保する。
隣の部屋から失礼して延長コードで引っ張ってくるなど。
大元が一緒なら一緒じゃないかという気もしますが、宅内配線の方が細いことが問題なので、断面積を2倍にする効果があります。(長さが倍になったら帳消しですが・・・。)ブレーカーが一つ落ちても照明は消えず、暗闇の中で手探りしなくても良くなる、という利点もあります。
(b)(可能であれば、)200Vラインから電源を取り、変圧トランスで100Vにして使用ことを検討する。
若干お金がかかりますが、200Vラインがあれば、あるいは200Vラインに変更できるラインがあれば、これも有効です。但しトランスは容量をきちんと見て選んでください(思ったより高価です)。
誘導モーターの機種なら、一部を200Vに配線変更してしまう手もあります。(余談ですが、上記の原則からは、「機械を200Vにして直前にトランスを入れる」というのはあまり意味がないことが推定できます。)
(c)延長コードはなるべく短く、太くする。
あり合わせのOA用あるいは家電用のテーブルタップで延長したりせず、ホームセンターなどで太いコードを購入して下さい。電圧降下した状態での継続使用は、モーターにも負荷があり、発熱、発火、断線などの故障にもなりうるそうです。やっている方はいないと思いますが、たこ足、継ぎ足しでの延長もやめましょう。
ということで、機械が途中でダウンする、集塵のパイプが詰まる、1回の切削量をチョットずつでガマンしなければならない・・・、と、電源周りは案外、じわじわとストレスのもとです。日々「喉元過ぎれば」でごまかせてしまうところはありますが、思い切って対処してしまうとスッキリします。
法規や電力会社の規制はよくわかりませんが、一般的には個室に20Aを超えるブレーカーを配置することは少ないようです。ので、趣味の木工家には現実的には最低電源ラインを2つ確保する、というのが良いのではないかと思います。その際は、集塵機と集塵される機械を別ラインに接続し、できれば余裕のある方に照明を回す、というように2ラインに均等に負荷がかかるようにします。
最近、200Vタイプのエアコンが増えるに伴い、200Vの(あるいは現状は100Vラインだが将来的に200Vにできるように)エアコン専用ラインのブレーカーを設置する家庭が増えましたが、このラインは木工的には狙い目だと思います(笑)。
※宅内の配線や、ブレーカーを交換、増設などをシロウトが勝手に行うことは、法律で禁じられています。電力会社との契約において違反を生じることもあります。
また作業やその結果自体に危険を伴う場合がありますので、各自よく調査の上で取り組みをお願いします。
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