ええ、どうやってシメようか、考えていました。
これまで、紆余曲折ありましたが、ポイントとしては下記の2点だったような気がしています。
(1)常にベベルが材料に接した状態で、切削する。切削開始時は、いきなり刃を突き立てるのではなく、ベベルがこつこつと触れる状態から少しずつ刃物を寝かせて、削り始める。
(2)材料の回転方向に対して切削ポイントが斜めになるようにし、木目に引っかかる危険性を回避する。
これで、特にセンターワークのかつ丸棒のような簡単な形状ならキャッチを食らう可能性はほとんどなくなると思います。
次にやっかいなのは、面の角度が場所により変化している形状です。入り組んだデコラティブな複雑な形はともかく、一見単純に見える緩やかな凸面や凹面でも、どうしてかキャッチを食らう時があります。今回はこれについて私なりに考えてみました。
(1)凹面
例えば、左のような太鼓状の形状を削っているとします。刃物は、フィンガーネールのシャローガウジを想定します。(1)は横から見た図というか、普段我々が見ている角度の図です。左側(図中(b)の位置)では調子よく削っていたのですが、一番径の細いところをすぎるやいなや(a)の位置辺りでぎゃぎゃっと掘り込んでしまう、というのが自己流の初心者(=ワタシ)の最も一般的なパターンと思います。
これは、凹面の一番径の細いところ(便宜上、「頂点」と称します)で刃の当たり方が劇的に変化するからですね。
図(2)は90度見方を変えて上から見た図で、この図で刃の当たり方を考えてみます。普通の人なら、(b)の位置では進む方に刃物を傾けて、赤点線丸印あたりのベベルを接しながら、黒矢印当たりのポイントで削っていると思います。この状態では、頂点から左側では安定して削れるのですが、頂点をすぎて面の傾きが変わると、ベベルが浮いてしまい図中(a)のように黒矢印で示した点の辺りで刃物が点接触になってしまいます。これはマズイ。
水平に当たっていればその場所をガリガリと掘り込むことになりますし、多くの場合のように接触した点が少しでも傾いていれば、刃物はそちら側に引っ張られて、らせん状にぎゃぎゃぎゃと無惨な爪痕を残すことになります。
(2)凸面
なんとなく上記の凹面のキャッチは、感覚的にも分かる気もしますが、案外凸面でキャッチを食らってビックリする人の方が多いんじゃないでしょうか(ワタシだけ?)。
同じように凸面を削っている図です。同じく刃物はフィンガーネールのシャローガウジ。図(1)で、(a)の位置では調子よく削れた当て方で、そのまま(b)の位置を削りにかかったその瞬間、坂を駈け上がるようにらせん状にぎゃぎゃぎゃとやられるパターンです。
またこれも図(2)のように上から見てみます。普通の人なら、この手の凸面は、刃物を大きく回転させて(a)のようにベベルを赤点線部分くらいに接するようにして削るはずです。この角度で調子に乗って(b)の部分を削ろうと思うと、当たり前ですが先に刃先が材料に接触し材料に食い込みます。かつ、その刃物は「\」の方向に傾いていますので、ついては、刃物は一瞬のうちに左の方向に坂を駆け上がるように食い込んでいく、という事になります。
上の数少ない例を見ても、上のように連続的に傾斜が変化する局面はキャッチの可能性が高いということがお分かり頂けると思います。じゃあどのように削るのが正解か、というのは私には話す資格もないと思いますのでここでは述べませんが。
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木工旋盤というのは、「王道」がないと言われます。その代わり、各人が「考え続ける」ことがとても重要なのではないか、と思っています。上手くなりたいからと言ってやたらめったら回数や時間をこなすのではなく、自分のやったやり方とその結果を良く見て、「これで良いや」と現状に満足するのではなくて、もっと良くするにはどうするか?というフィードバックを、想像力を豊かにして常に働かせることです。
実際、これまで長々と屁理屈を並べてきましたが、ああでもないこうでもないと考え試行錯誤した結果、私自身がキャッチを食らう確率は、前に比べて格段に減っています。その意味で、この記事で最も得るものがあったのは、ワタシ自身ということになるかと思います(笑)。すなわち、「キャッチを防ぐ特効薬」というのは存在せず、常に材料と刃物が、立体的にどのように当たっているかを、常にイメージすることが(特効薬ではないものの)「万能薬」となり、自らが悩み考えた回数やその深さが蓄積され、自らの技術として活きてくるのではないでしょうか。・・・木工も同じですね。
(この項終わり。)
末筆ながら、コメント欄やメールでご指導や考えるヒントを与えて頂いた方々に、この場を借りてお礼申し上げます。
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