カテゴリー「旋盤奮闘記」の記事

2007.07.18

旋盤墨付け道具

070718a旋盤のセンターワークで、少し凝った意匠のものを作ろうと思うと、(私もそうですが)大抵の方はまずは型板を作って、そこから寸法を材料に写すと思います。でも、決まった形を何十本と作ることになると、もういちいち旋盤を止めて鉛筆で罫書くのさえおっくうになってきます。
そこで、TIPSと言うほどではないですが、その辺の端材を拾ってきて、罫書くべきポイントに、ノミでV字に軽くミゾを入れます。 以上。 完成。

070718bこんな風に使います。(実際は旋盤は運転していますが撮影時の安全のために停止しています。)左側の旋盤のハウジングに押し当てると、ほぼちょうど良い位置に来るようにしてあり、この治具を左手で持ち、鉛筆を右手に持って旋盤を回すと、ノンストップで全ての位置の罫書きができます。

つまらないことかもしれませんが、何十個も同じものを作ると言う時は精神的にもメゲて来ますので、作業の「ノリ」を阻害させないためにも、こういう工夫も時には大事かと。


ケータイで撮ったので画像が悪いのはご容赦下さい。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007.04.02

キャッチに関する考察(7)

ええ、どうやってシメようか、考えていました。

これまで、紆余曲折ありましたが、ポイントとしては下記の2点だったような気がしています。

(1)常にベベルが材料に接した状態で、切削する。切削開始時は、いきなり刃を突き立てるのではなく、ベベルがこつこつと触れる状態から少しずつ刃物を寝かせて、削り始める。
(2)材料の回転方向に対して切削ポイントが斜めになるようにし、木目に引っかかる危険性を回避する。

これで、特にセンターワークのかつ丸棒のような簡単な形状ならキャッチを食らう可能性はほとんどなくなると思います。

次にやっかいなのは、面の角度が場所により変化している形状です。入り組んだデコラティブな複雑な形はともかく、一見単純に見える緩やかな凸面や凹面でも、どうしてかキャッチを食らう時があります。今回はこれについて私なりに考えてみました。

(1)凹面
070402b例えば、左のような太鼓状の形状を削っているとします。刃物は、フィンガーネールのシャローガウジを想定します。(1)は横から見た図というか、普段我々が見ている角度の図です。左側(図中(b)の位置)では調子よく削っていたのですが、一番径の細いところをすぎるやいなや(a)の位置辺りでぎゃぎゃっと掘り込んでしまう、というのが自己流の初心者(=ワタシ)の最も一般的なパターンと思います。

これは、凹面の一番径の細いところ(便宜上、「頂点」と称します)で刃の当たり方が劇的に変化するからですね。

図(2)は90度見方を変えて上から見た図で、この図で刃の当たり方を考えてみます。普通の人なら、(b)の位置では進む方に刃物を傾けて、赤点線丸印あたりのベベルを接しながら、黒矢印当たりのポイントで削っていると思います。この状態では、頂点から左側では安定して削れるのですが、頂点をすぎて面の傾きが変わると、ベベルが浮いてしまい図中(a)のように黒矢印で示した点の辺りで刃物が点接触になってしまいます。これはマズイ。

水平に当たっていればその場所をガリガリと掘り込むことになりますし、多くの場合のように接触した点が少しでも傾いていれば、刃物はそちら側に引っ張られて、らせん状にぎゃぎゃぎゃと無惨な爪痕を残すことになります。

(2)凸面
なんとなく上記の凹面のキャッチは、感覚的にも分かる気もしますが、案外凸面でキャッチを食らってビックリする人の方が多いんじゃないでしょうか(ワタシだけ?)。

070402a同じように凸面を削っている図です。同じく刃物はフィンガーネールのシャローガウジ。図(1)で、(a)の位置では調子よく削れた当て方で、そのまま(b)の位置を削りにかかったその瞬間、坂を駈け上がるようにらせん状にぎゃぎゃぎゃとやられるパターンです。

またこれも図(2)のように上から見てみます。普通の人なら、この手の凸面は、刃物を大きく回転させて(a)のようにベベルを赤点線部分くらいに接するようにして削るはずです。この角度で調子に乗って(b)の部分を削ろうと思うと、当たり前ですが先に刃先が材料に接触し材料に食い込みます。かつ、その刃物は「\」の方向に傾いていますので、ついては、刃物は一瞬のうちに左の方向に坂を駆け上がるように食い込んでいく、という事になります。

上の数少ない例を見ても、上のように連続的に傾斜が変化する局面はキャッチの可能性が高いということがお分かり頂けると思います。じゃあどのように削るのが正解か、というのは私には話す資格もないと思いますのでここでは述べませんが。

・・・・・・・

木工旋盤というのは、「王道」がないと言われます。その代わり、各人が「考え続ける」ことがとても重要なのではないか、と思っています。上手くなりたいからと言ってやたらめったら回数や時間をこなすのではなく、自分のやったやり方とその結果を良く見て、「これで良いや」と現状に満足するのではなくて、もっと良くするにはどうするか?というフィードバックを、想像力を豊かにして常に働かせることです。

実際、これまで長々と屁理屈を並べてきましたが、ああでもないこうでもないと考え試行錯誤した結果、私自身がキャッチを食らう確率は、前に比べて格段に減っています。その意味で、この記事で最も得るものがあったのは、ワタシ自身ということになるかと思います(笑)。すなわち、「キャッチを防ぐ特効薬」というのは存在せず、常に材料と刃物が、立体的にどのように当たっているかを、常にイメージすることが(特効薬ではないものの)「万能薬」となり、自らが悩み考えた回数やその深さが蓄積され、自らの技術として活きてくるのではないでしょうか。・・・木工も同じですね。

(この項終わり。)

末筆ながら、コメント欄やメールでご指導や考えるヒントを与えて頂いた方々に、この場を借りてお礼申し上げます。

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2007.03.24

キャッチに関する考察(6)

迷走街道ばく進中。

前回は、「刃物のベベルを沿わせて削る」ことが重要であることを説明しました。
ガウジ系の刃物ならばそれだけでかなり結果は変わってくると思いますが、スキューみたいな「鋭い」刃物だと、やはり不意に持って行かれる感触は残るのではないかと思います。もう少しハナシを続けます。

070323a_1唐突ですが、木工旋盤では、同じ材料からでも「棒」を作るか「鉢」をつくるかで、2種類の木取りの方法があります。左図の上の取り方は、centerworkと言って、「棒」を作る際によく取られる形です。木口が軸に設置され、木端の面がぐるぐると回るイメージです。下の取り方は「鉢」や「皿」を作る際に取られる形で、外周部分を削る時は木口と木端が交互にぐるぐると巡ってくることになります。

この図を見ても、旋盤以外の木工ではなるべく避ける「逆目状態の加工」というのが、どうしても旋盤では避けて通れないことが分かると思います。

下の左側の図は、逆目状態を模式的に疑似立体的に描いたものです。

070323bまず、図中(a)のように真正直に木目と平行に刃物を当てることを考えます。旋盤では、材木がもの凄いスピードでこっちに飛んでくるわけですので、この状態で逆目に当たると、木目の軟らかい部分に刃物が食い込んでしまい、キャッチの引き金となってしまいます。

そこで、旋盤の先生や教科書がよく言われるように、(b)のように刃物を斜めに当ててみます。こうすると、刃物の接触面が単一ではなくて複数の木目を横断することになり、(a)で起こりそうな「木目への食い込み」は起こりづらくなり、切削は安定し、キャッチが起こりづらくなることが分かります。


もう一点、この時に大事なのは刃物を斜めに当てながらも「ベベルを材料に沿わせる」ことを忘れないことです。

上の右側の図に赤点線で書き加えていますが、真正直に当てる(a)の当て方だと、赤点線の四角領域付近でベベルが材料にかなりべったり接するような角度を、比較的簡単に見つけることができます。しかしながら、斜めに当てる(b)の当て方になると、幾何学上べったり接することはできません。そこで、赤い点線で示したようにごく一部の接線が接するような角度を探すというイメージになります。(幾何学上は、線でもなくて点に近い状態で接している状態になるはずです。この辺りは「線で接する」という「イメージ」を持つことが大事です。)

この時、横方向について言えば、図示したようなスキューチゼルであれば、図示したように真ん中より少し短辺側(図では右側)に寄せるのが原則であると言われています。切削中、切りくずは刃物が接している部分、即ち赤点線の付近から出てきますので、この当たりどころは、切りくずを見ながら調整すれば良いというわけです。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007.03.22

お笑い吸塵アタッチメントⅡ

070321a先日の超即席吸塵アタッチメントの改良版、いや改悪と言うべきか(笑)。

この前のは旋盤のツールレストを流用していたので、サンディング時しか使えなかったのですが、サンディング時にも、ここだけもう一回手直ししたい、みたいなこともあります。

洗濯バサミの親分みたいなクランプ(名前忘れた)を使って、ツールレストの反対側にぱくっと固定できるようにしました。これでツールレストを付けたまま吸塵できます。

ワタシ的にはこれで当分「満足」かな!?

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007.03.18

キャッチに関する考察(5)

迷走気味の本シリーズ、こうなったら行き着くとこまで。

とりあえずここまでで何故不意に横方向に持って行かれるような現象が起こるのか、はわかりました。
とりあえず、「書いてみる」ことでワタシは個人的にはもう、心の底から納得しています。 (ああ皆さんあきれないで~)

次にキャッチを発生させない削り方を考えると、どうしても、なぜ刃物が引っかかるか?の方を考えなければならないと思います。

070318a_1

唐突ですが、旋盤ではない木工で使う「ノミ」ですが、これは刃裏の平面性を非常に大事にします。もちろんそれは研ぐために必要なわけですが、ノミを使う際にも、この平面を基準にして掘り進めていくのが基本です。上図の左側の図は、刃裏の平面を使って「真っ直ぐ」削ることを示す模式図です。平面に刃裏をピッタリ付けることで、その先がいくら凸凹でも、この平面の延長で真っ直ぐ削っていくことができます。

いわば刃裏を治具というかガイドのように用いるイメージです。この時、削る人はノミを結構な力で下に押しつけながら刃を掘り進めているはずですが、もちろん刃裏がガイドとなって、いくら押しつけても深く掘れすぎることはありません。

(注:もちろん日本のノミは裏を中すきの状態にするわけですが、これは研ぎやすくするための策であり、刃先と中央以外の周囲の部分で平面が形成されていることはご存じの通り。)

旋盤の教科書に最初に書いてあり、よく言われるのは、「刃物のベベルを材に沿わせること」です(スクレーパ系の工具を除く)。右の図で模式的に示すように、これは上記の平面におけるノミと全く同じ考え方です。ベベルが材料に押しつけられることで、それ以上刃が食い込んでいるのを防ぎ、キャッチを防いでいるわけです。

当たる角度を一定にしてさえいれば、1回で削れる量はある量以下になるように、自動的に制限されるという表現が正しいかも知れません。ごく理想的には、上図の左側の角度を正確に保持していれば、ずーっと押しつけていても、ある程度削れてしまえば(図の鎖線のところまで)、後は全く削れなくなるという状況に到達するはずです。

というのは実は本シリーズの1日目で書いたことの繰り返しだったことに今頃気が付いたり付かなかったり。

でもプロ級のクリーンなカットを目指す前に、キャッチの起こらないことだけをまず目標に置くならば、小手先のノウハウや教科書的なセオリーよりも、この「ベベルを沿わせて削る」イメージを頭の中に持つことが非常に重要な気がしています。

| | コメント (2) | トラックバック (0)

ポテチ鉢

070318a最近子供が大きくなってきて、お腹に多少たまるような、塩味のお菓子しか欲しなくなりました。で、こんなサイズの菓子鉢があったら良いかなと。ただナカトミの旋盤には少し手に余る大きさです。

イマイチやぼったいですが、このくらいの素朴な感じが好きなんだからしょうがない。でももう少し薄くしても良かったかも。

実は、ウェブログ上でキャッチについて考え中で、フェースワークにおけるキャッチってどんなんだったっけ?と思って久しぶりに挽いてみたというのが本音なのですが、結局センターワークと同じなのかなあと思ったりして。

建築材の端材のヒノキ。φ200mm、オイル仕上げ(まだ乾いてない)。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007.03.17

キャッチに関する考察(4)

実は、どっちの方向に進んだらゴールが見えるかよくわからなくなっていましたが、Woodturning.mieのtake@mieさんからコメントを頂き、すこし考え直すことができました。(ありがとうございます。)もう少し駄文を続けます。

まずお詫びと訂正。

前回、『工具の真ん中で削るのが基本的に「安定」である』と書きましたが、これは「間違った削り方」です。
「正しい削り方」は議論の最後に言及しようと思っていましたが、take@mieさんの言うとおり、もっと違う状態で刃が当たるのが「正しい削り方」です。

前回までは、特に横方向の力に着目し、刃の真ん中で削る方が「横方向に持って行かれる力が発生しない」、と書きました。その意味では正しいと思いますが、それが即ち「キャッチが発生しない」ということを意味しない、ということです。

ワタシの書き進め方が間違っていたのは、下記の2点のポイントに集約されると思います。

(1)キャッチの際の「持って行かれる力」は、刃物が引っかかる力(切削抵抗)をまず第一に考えるべきであり、横方向の力の発生は副次的なものである。
(2)工具の真ん中で削るのは、横方向の力に対しても「安定」に見えて実は「安定」でない。

(1)はまた後日考えるとして、話の流れとして先に(2)について考えます。
「安定」に見えて実は「安定」でないとはこれいかに。

前回図示した凸型工具、凹型工具ですが、いずれもど真ん中で削ると確かに横向きの力は発生しません。しかし逆に、少しでも真ん中から位置がずれると、急に横方向の力が発生すると言うことになります。言い換えれば、両側が断崖絶壁の峰に立っているようなもので、すこしでも足を踏み外すと横方向に持って行かれると言う状況です。

070317a

自動制御の理論に「ロバスト制御」という考えがあります。その中身は忘れましたが(笑)、本当に「安定」する状態というのは、ある程度の外乱があっても何らかの力が働いて、正常状態に戻してくれる状態を言います。上に概念図を示すように、ある状態からの変位を横軸に、その時のポテンシャルを縦軸にとると、安定な状態は図(a)のようであり、正常状態が最も安定していて、そこからずれると正常状態に戻そうとする力が働き、状態は正常状態であり続けようとします。

しかし、正常状態が図(b)のようにポテンシャル的に底ではない場合は、何かの外乱でどちらかにずれると、状態はあっという間にどちらかに転げ落ちてしまいます。図(c)のように「谷」が片側だけ、あるいはポテンシャル的に平坦ならばまだましですが、これでも正常状態に居続けることは、これ以外の「力」の介入が必要です。

前回説明した工具の真ん中で削るのは、まさに図(b)のような状態ですよね。その瞬間は「準安定」であっても決して「安定」でないというわけです。ということをもっともらしくクドクドと説明してみました。

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007.03.15

キャッチに関する考察(3)

キャッチに関する考察、小難しい方向にトバシすぎた気がしますが、ごく簡単に言うと前回までのあらすじは下記の通りです。

(1)刃物は、ベベルが接するくらいに寝かせて被削材にアプローチすると、キャッチがなく安定して削れる。
(2)刃物は、右に傾けると左に、左に傾けると右に持って行かれる力が生じる。
   (注:とりあえず今はスクレーパは話から除外してます。)

今回は、刃物の形とキャッチについて考えます。

(1)凹型刃物
070315a_2
項目の呼称は仮称です。

上図の左側のような、ラフィングガウジのような工具を考えます。工具の形状を今回は大胆に省略して、右図のようなV字型形状とみなして考えます。通常、最も底の部分(図中 1b)を用いて削っていくわけですが、この部分がきちんと接している分には、工具は左右のどちらにも持って行かれることはありません。問題は、何らかの理由で底の部分を外れた場合です。図中 1a で示す左側部分だけがあたると、上記の2原則のうち(2)に該当し、工具は左に持って行かれます。同様に1cの右側部分だけが当たると、反対に右に持って行かれます。(図中、赤矢印。)

(2)凸型刃物

070315b_1
次にシャローガウジのように、フィンガーネール状に研いである刃物を考えます。上記と同様、形状を大胆にΛ型とみなします。この場合は上記と反対で、図中 2a の左側部分があたると、工具は右に、2cの右側部分だけが当たると左に持って行かれることが想像できると思います。2bの位置ならば、上と同じく安定です。

センターワークで起こるキャッチの代表例として、斜面(径が大→小と連続的に変わっていっている部分)を削っている時に、斜面を登るようにぎゃぎゃぎゃっと行く、というキャッチが、結構多いのではないかと思います(→恥ずかしい例)。これらについては、上記のどちらかの仕組みで工具が横方向に持って行かれて、径が大きくなっている分だけさらに食い込んで、そのせいでもっと横方向に強く持って行かれて、・・・(以後繰り返し)、という悪のスパイラルにはまってしまって起こる、と説明することができると考えます。

| | コメント (2) | トラックバック (0)

2007.03.12

追記

木工旋盤について、どうしたらキャッチなく安全に削れるか考えていますが、私の数少ない経験で考えてしまうと、どうしても偏ってしまうような気がしています。

つきましては、皆さんのキャッチの体験談を募集したいと思います。
考察のために、(1)刃物の種類、(2)・材料の形状(削りはじめる前の形と、削ろうとしていた形)、(3)刃の角度などを簡単に説明いただけると幸いです。(写真、あるいは絵での説明を歓迎します。手書きのメモでも、こちらで再作画します。)

解決されている方については、どのようにしたか追記いただけると嬉しいです。
未解決の場合は、どうしたら良いか弊ブログで諸先輩にご意見を募ることもできると思います。
諸先輩の皆様におかれましては、初心者の頃はこんなのに苦労するんだよ、というのも歓迎です。

こういうのは、レスポンスがないと非常に寂しく、企画する方もその意味ドキドキですので、是非ふるってご応募下さい。


コメントか、あるいはメールにてお知らせ下さい。(確認のため、連絡できるメールアドレスを教えてください。)

| | コメント (0) | トラックバック (0)

2007.03.11

キャッチに関する考察(2)

「キャッチの起こる法則」を求めて、とりあえず連載の2回目。前回は、縦方向あるいは角度方向のキャッチの起こらない安定な切削状態についてということで、記載をしました。今回は、横方向、あるいは幅方向のそれについて考えてみます。

070311a_1
図のように、円筒状の被削材に、平べったくて厚みのない仮想的な刃を、ツールレストでしっかりと保持して、当てることを考えます。

まず、図(a)はごく普通に水平に刃が当たっている状態です。刃に厚みがないので、前回の角度の議論は無視します。被削材の回転は、刃に対して真っ直ぐ下向きに力 を与えます。刃が水平なので、刃の縦方向にかかる力 Fm は、かかった力 と同じ方向で同じ大きさです。刃はツールレストでしっかり保持されているので、この方向の力に対しては、反力により力の釣り合いが成立し、刃はその状態で安定します。表現が正しくないかも知れませんが、少なくとも不本意に横方向に刃を持っていこうとする力は、この状態では発生しないということは感覚的にもご理解いただけると思います。

次に図(b)のように刃を斜めにひねった場合を考えます。(通常自分から好き好んでこんな事をすることはないと思われるかも知れませんが、そう思う方は思考実験としてお付き合い下さい。)
この状態では、同様に縦方向に力 を受けますが、刃が斜めなので、力は刃に垂直な方向 Fm と、刃に平行な方向 Ft に分解されます。刃の周辺に摩擦があれば刃は真っ直ぐ鉛直方向に持って行かれますが、摩擦がゼロ(あるいは少ない)とすると Ft は逃げてしまいますので、 Fm の力のみが刃にかかります。

070311c_1この力は刃と同じ角度のツールレストであれば受け止めることができますが、水平なツールレストだと、下向きの力は反力 Fm’ で受け止めまられますが、横方向の力 Ft’ は残ってしまいます、この横方向の力が、不本意に刃を横向き(この例ならば右方向)に持っていく推進力になるというわけです(左図参照)。

これが、横方向に不意に持って行かれる類のキャッチの、基本原理であると考えます。

続く(かな?)。

| | コメント (0) | トラックバック (0)