ミニマル集塵スタイル
先日、Dust Deputyを使っていて、一瞬ではありますが、自動・手押しカンナってこんなにお気楽なものだったんだ、と思いました。今までずっと、製材、特に自動カンナに億劫さを感じていたのですが、それが木屑のせいだったと再認識しました。(工房が広いとなお良し。)
木工初心者の方が、だんだん本格的になってきて自動カンナを購入しようかという段階があると思います。
その際はそろそろ集塵を真剣に考えた方が良い時期である、とこれからは強くアドバイスしたいと思います。
さて、集塵それ自体は作品の出来映えには表面的に反映されませんし、よほどシリアス木工家でない限り、集塵は最低限で済ませたい、というのが大方の思いではないかと思います。オバQのような袋が付いている据置き型の木工用集塵機を購入できれば良いのですが、予算、スペース、作業スタイルの関係で、そう決断できない方も少なくないと思います。自宅の一部で作業するアマチュアであれば、トータル消費電力の問題もあります(=ブレーカーが落ちる)。
ということで、ミニマルな自分フィットな集塵スタイルを考えようと思うと、第一にソース(動力源)をどうするかの問題があります。
(1)家庭用掃除機で代用できないか?
(2)いわゆる「業務用掃除機」(よくある円筒形の大型のタイプ)で、代用できないか?
以下、ワタシの個人的な経験から、感触めいたものを述べさせて頂きます。組み合わせの問題であり、求める完成度も異なると思いますので、最終的には自己判断でお願いします。
(1)まず、家庭用掃除機ですが、実は手持ち系の電動工具はほとんどこれで集塵が可能です。据え置き機械も含めて、経験上「集塵しないと困る作業」の70%くらいはカバーできると思います。最初のかつ最大の関門は上述の自動カンナです。
出てくる量がとてつもなく多いことと、構造的に家庭用掃除機では吸い込みづらい仕組みになっているからです。ツーステージ化などで自動カンナの集塵を家庭用掃除機で対応しているアマチュアのサイトはいくつもありますが、集塵機構の自作などをよほど上手くやらないと厳しいと思います。
家庭用掃除機とオバQタイプの差は、消費電力(パワー)だけではありません。分かりやすく説明しているサイトとして、下記をご参照下さい。
簡単には、
『大きい口径から「風量」でごうごうと引くのが集塵機、
小さい口径から「真空度」「静圧」で引くのが掃除機』
というイメージで良いかと思います。
家庭用掃除機で自動カンナが集塵できないのは、「風量」が少ないためであると理解できます(特に大口径(=低抵抗)の場合に)。
(2)次に、円筒形の「業務用掃除機」で何とかならないかと考えます。
一般に自動カンナで必要とされる風量はカタログ値で500CFMで、これは14m3/minにあたります。
下の表に誘導モータータイプの最下位タイプとしてデルタ、業務用掃除機の代表としてFeinとマキタ、家庭用掃除機の代表としてシャープの掃除機のカタログデータを示します。家庭用掃除機をまず検証しようと思いましたが、「吸込仕事率」という値以外に、「風量」、「静圧」については記載がほとんど見当たりません。シャープの掃除機は市価6~8千円くらいのごく一般的なタイプを代表としましたが、どこもだいたい「吸込仕事率」で250~500Wくらいのものがほとんどのようです。
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デルタ Fein マキタ シャープ
AP300 Turbo I 482(P)強 EC-KP7F
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風量(m3/分) 15.4 3.2 1.8 -
静圧(kPa) 1.3 22.4 20.6 -
騒音(dB) - max.60 65 62
消費電力(W) (3/4HP) 1000 1050 1000
仕事率(W) - - 170 500
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吸込仕事率は、「W」表示なので電気の量かと思いますがそうではなく、下の式で表される値です。
吸込仕事率(W) = 0.01666 X 真空度(Pa) × 風量(m3/min)
日本の掃除機にはJISで表示が義務づけられており、特徴的なのは実使用時を想定して測定されているようです。そのため、「風量」「静圧」の表示とは整合しません。(マキタがわずかに「風量」「静圧」「仕事率」を全て記載していますが、かけ算しても仕事率には一致しません。)
業務用掃除機はカタログ値では風量の面で圧倒的に不足していますが、雑誌によれば、海外ではShop Vacuumを自動カンナの集塵に使うことは珍しいことではないようです(一般的ではないと思います)。それで、ワタシ自身は一抹の不安はありながらもFein Turbo Iを購入してトライしたのですが、結果オーライで全く問題なく集塵ができています。あくまで感触ですが、短い距離で直結する前提ならば、Feinでほぼ問題なくどの機種でも自動カンナの集塵ができるのではないかと思います。
自動カンナに対しては、(1)自宅のお古の掃除機、(2)マキタの型落ち円筒形集塵機、で集塵をトライした経験があり、その間で比較すると、(1)の家庭用では時々ホース詰まりが発生し (2)のマキタでも「ごそっ、ごそっ」とカタマリで吸い込まれていく感があったので、その点ではFeinの方が数段 頼もしいです。この「感触」が本当ならば、Feinの独自の技術で2倍近くの「風量」を叩き出していることが寄与していると思います。が、マキタの方は相当使い込まれていたので、公平な比較ではないです。
シリアス木工家あるいはプロの方から見ると笑われそうな話ですが、このレベルで悩んでいる方も実は多いと思います。Feinの回し者ではないですし組み合わせの問題ですので、結局のところ自己責任でお願いしますということになってしまいますが、集塵と家庭のバランスに悩むご同輩に、少しは参考になるかと思い、数字データと合わせて「感触」を記載しました。
【参考】
ミネベア:技術資料 風量・静圧の測定と単位の換算
mokkinさん:アマチュア木工の集塵シミュレーション (かなり難解)
※ 上述のpongooさんのサイトを見ると、オバQ集塵機が万能ではないことも明らかです。本来は掃除機と集塵機、2台を用意して使い分けるのが好ましいと思いますが、Feinなら一台で使い回しできます。その意味でもなかなか絶妙な選択ではないかと思います。
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