ルータービット折れた
木工の災害事例、ヒヤリハット事例は隠すことなく公開すべしと言うOYA-Gさんの趣旨に賛同し、恥ずかしながらワタシの失敗事例を紹介します。
いきなり脱線しますが、「ヒヤリハット」というのは、災害には至らないがヒヤリとした、ハッとした事象という意味で、冗談のようですが製造業で日本じゅう通用する用語です。ハインリッヒの法則によれば、統計的にヒヤリハットと重大災害の比は300:1であり、300件のヒヤリハットがある職場は重大災害が1件起こってもおかしくない、だからまず第一にヒヤリハットを摘出して減らしていくことが大事、と教えられます。
本題に戻りますと、先日の小箱の上板および底板をはめるための溝を突いている際に、ルーターテーブルで3mmのビットを折ってしまいました。
折れたビットとほぼ同型のビットを並べてみました。これだけの大きさの超硬の破片が高速回転ではじかれてすっ飛んでいったことになります。保護メガネはかならず着用するようにしましょう。(目だけでは不十分かも、とも思えてきます。)
今回、ルーターテーブルで溝を掘る際に、ちょうど良いサイズのビットがなくて3mmのビットで複数回に分けて掘ることにしたのです。この際安全に削るためには、①→②の順に掘らなければなりません。(②→①の順に掘ると図中「A」側だけを削ることになり、ビットの回転方向(赤矢印で図示)を見ればわかるようにいわゆる「クライムカット」の状態になり、材料は力を掛けずともビットに触れた瞬間にビットに引き込まれていくことになります。)
今回は、順番を間違えたわけではなく、1回目の削りの後に確認したらコンマ数mmだけ溝がずれており、わずかにフェンスを戻して「A」側をちょびっと削りたくなっただけなのです。しっかり持っておれば大丈夫と思いましたが、3本目くらいでガツンと行きました。今回はビットが耐えきれず折れて、私自身は事なきを得ましたが、場合によっては材料がすっ飛んでいく、あるいはその拍子に手がビットに触れて怪我をする、などの災害が想定されます。
教訓として、
・ビットは溝の幅に合ったものを使う。(溝の幅を手持ちのビットに合わせて設計する。)
・欲張って一度に深く削ろうとしない。
・クライムカットは避ける。
・保護メガネを着用する。
以上です。
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コメント
なるほど、ルータでビットより幅広の溝を突くって訳ですね。ちょっとした盲点ですね。言われて八ッと気づきましたよ。でも3mmと細いBitでもビットが折れるほど引っ張られるんですね。そこまで力があるとは知りませんでした。すばらしい情報をありがとうございました。
私が歯止めをやるとすると、「ルータテーブルでビットより幅広の溝は突かない」です。この場合切削しているビットが見えていないので、その点もクライムカットになる可能性もあるのではと思います。ルータテーブルを使わずに、ハンドルータでやれば、まずこのようなことは起きないと思います。でもやはり私はテーブルソーを使います。
投稿: 松本 | 2009.11.12 09:56
松本さん
コメントありがとうございます。
記事をアップした後に気が付いたのですが、テーブルソーならば横方向の回転、即ちクライムカット/ダウンカットを考慮する必要がないので、テーブルソーでやったら良かったんですよね。
テーブルソーで溝突きは仕上がりも綺麗で早いことは知っているのですが、今まで、安全性のうち「被害があった場合の甚大度」をメインで考えてなるべくルーターでやるというのを個人的な大原則としていました。考え方を改めた方がよいのかどうか、もう少し考えてみます。
本例に限らず一般的にルーターは、ルーターテーブルにせよハンドルーターにせよ、ヒヤッとするあるいは材が割れることはあるにせよ、実質上はケガに至る可能性は少ないように思います。(ハンドルーターでも平行フェンスを同様に設定すれば、クライムカットは起こると思います。)
あるいは材が飛ばされるかですが、回転数が高くても刃径が小さく実質の速度は遅いので、よほど大径のビットでなければ、材料が飛んできて内臓破裂、とまではいかないと思います。
投稿: かんりにん | 2009.11.12 11:13
やはり、この手の溝はテーブルソーでしょうか。
ルーターテーブルで溝を掘ると切削くずの
逃げ場がないのでビットに結構負担がかかる
ような気がします。
テーブルソーでフェンスとマイターゲージを
併用すると安心感があります。
材料と自分の体との間にマイターゲージが
あるだけで安心感が違います。
場合によってはマイターゲージのフェンスと
材料を一緒に切ってしまっても良いと思います。
投稿: acanthogobius | 2009.11.12 11:35
acanthogobiusさん
コメントありがとうございます。
acanthogobiusさんはご存じの上と思いますが、フェンスとマイターゲージを併用するのは一般的にはご法度とされており、個人的には気分的に抵抗があります。
刃とフェンスの間に挟まった材料がキックバックで飛んでくる危険性がある、というのがその理由ですが、特に危険性が高いのは溝突きではなく完全に切り離してしまうカットの場合であって、溝突きならほとんどの場合問題は起きないだろう、とは理解はしています。
個人的には自分の性格上、溝突きと同じ気持ちでうっかりカット作業をしてしまって大惨事、・・・というのがむしろ怖くて盲目的に禁止事項としてしまっているだけなんですけどね。
投稿: かんりにん | 2009.11.12 12:14
うーん、そこまで言われると、自分で安全と
思う方法でやって下さい、としか言えない
ですね。
切り離すのにマイターゲージを使う人が
いるとは思っていないので。
投稿: acanthogobius | 2009.11.12 12:30
ハイ、acanthogobiusさんはご存じと思いましたが、この記事のコメント欄「だけ」読んで誤解される初心者の方がいたらと思い、要らないことを書かせて頂きました。
投稿: かんりにん | 2009.11.12 12:34
補足を
>(ハンドルーターでも平行フェンスを同様に設定すれば、クライムカットは起こると思います。)
当然そうですね。
言いたかったのは、ハンドルータなら、ビットと切削している部分が直接目に見えるので、クライムカット方向で切削する人はほとんどいないはず、という意味で、ハンドルータなら、と言いました。
しかも、ハンドルータならフェンスを合わせる時も見えますからね。やはり、見えると見えないのでは、精度もそうですが、安全上相当違ってくると思います。
ところで、 acanthogobiusさんの件ですが、
切削距離の長い場合はマイターゲージとフェンスを同時に使うことはやめたほうが良いと思います。
フェンスが本当にのこ刃と平行になっていない場合は、材料はどちらを基準に動きますか?当然、平行にあわせておくことが前提ですが、都度調整しておかないと、常に平行が出ているかどうかはわかりませんよね。
多分、手あるいはクランプで材料とくっついているのはマイターの方ですよね?とすると、フェンスにずれがある場合、切削距離が長くなればなるほど材料とフェンスの間に隙間が空くか、あるいは隙間がマイナスになるのではないでしょうか。そうなった時に、動きが窮屈になり、安全性を脅かすってことも考えられそうですが。
でも、切削距離の短い場合は同時に使うことも有りますね。例えば、框のホゾ(胴付きじゃなくホゾ部分の欠き取り)をテーブルソーで取る場合等です。
投稿: 松本 | 2009.11.12 14:05
松本さん
私は、ハンドルーターでもこれで削ってホンマに良いんかいな、とスイッチを入れる前に考え込んでしまうことがあります。空間認識能力が低いんでしょうね^^。経験値が上がれば自然と覚えると思うのですが。ブログを通して図示してみたりすると意外と頭が整理されたりするので、駄文を書き連ねるのは自分のためでもあります。
フェンスとマイターゲージ併用については、松本さんのご指摘は原理的にはその通りだと思います。一方でacanthogobiusさんの言う通り、絶対してはいけないことは厳然としてあって、それ以外については「たられば」というか、可能性(危険性)がどれだけあって、そのリスクをどこまで見るかという問題になると思います。
松本さん、acanthogobiusさんともある程度の知識をお持ちの上で建設的な議論をなされているわけですが、管理人としては万が一にも、その他の読者の方がこのブログを読んで怪我した、ということにもならないようにと思うと、ついつい重箱の隅をつついたり、基礎の基礎をひっくり返したりしたくなってしまいます。
投稿: かんりにん | 2009.11.12 15:20