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2009.06.27

アメリカ機械の50Hz地帯での対処

これまでワタシは、輸入機械は電圧さえ気を付けていれば、あるいはちょっとくらい低いくらいだったら、何でもそこそこ使えるのかなあ、と思っていましたが、こと大型機械に用いられる誘導モーターについては、「周波数」が無視できない問題であるようです。

もうずいぶん前ですが、Grizzlyのバンドソーが50Hz地帯で煙を出したと言うハナシは有名ですし、これらについて専門的に検証されたエントリーが、T's韓国日記さんにまとめられています。
海外木工機械を購入する その1その2その3その4まとめ


先日紹介したmotors and drives.comのサイトはどうやらBaldorがスポンサー?のようですが、非常にわかりやすく、面白く読むことができます。その中で、「50Hzの国にアメリカから輸出するにあたり、どう対処する?」みたいな、向こう側から見た記事がありましたので、松本さんの記事と重複しますが、最後に一部を紹介します。これで、この話題については一段落と言うことにしたいと思います。

http://www.motorsanddrives.com/cowern/motorterms25.html

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50Hz電源の対処方法

はじめに

アメリカのメーカーから50Hzの国に輸出することが増えるにつれ、50Hzでかつなじみのない電圧の電源で運転されることによる問題が起こっています。運良く、特別な設計をすることなくこれらの条件下でも使用可能な状況はいくつかあり得ます。

第一の選択は、多種のモーターから、50Hz用のモーターをストックしておくことです。50Hzモーターが存在しないか、カスタマイズ不可の場合でも、他の回避策もあります。

これらの回避策を記述するためには、3相モーターと単相モーターを分けて議論しなければなりません。

3相モーター

3相モーターでは、状況は極めてシンプルです。大ざっぱには下記の通りです。
【電圧と周波数の比が一定ならば、モーターは下げた周波数、下げた電圧で運転することができる。】

上記の条件であれば、モーターは60Hzの時と同じトルクを発生する事ができます。トルクであることを忘れないで下さい。以下に例で説明します。

1馬力、3相、230/460Vの標準的な誘導モータの電圧・周波数比は、460÷60=7.66V/Hzと計算されます。
このモーターの場合、同じ比率になる電圧は、50Hzでは50×7.66=383Vになります。かくして、標準的な60Hzモーターは190あるいは380Vであれば、使用することができます。この状態では、60Hzの時と同じトルクを発生することが期待されます。(この場合は、3lb.・ft. になります。)

もちろん、モーターの速度は60Hzより遅くなります。通常、速度はだいたい6分の5になります。1725rpmであれば、1425rpmになります。

馬力はどうなる?

馬力は速度とトルクの積なので、60Hzの時に比べて、上記の場合、馬力は6分の5になるか、あるいは大体80%強くらいになることがわかるでしょう。この問題を解決するためには、2つのアプローチがあります。一つは、1ランク上の馬力のモーターを選択することです。1-1/2馬力モーターは50Hz地帯では1馬力のモーターとして使えます。多くの場合、1ランク上のモーターを使うことにより余計に費用がかかりますが、実質上、モーターを特注することを思えば、費用面および時間面でチャラになります。この方法は堅実で間違いがなく、各種のモーターに使える方法です。

(ここから一部宣伝^^;。)Baldor社のモーターは、固有の伝統ある設計と、電圧許容幅により、多くのタイプは200V3相50Hz、400V3相50Hzで使用できます。そのうちいくつかは415V50Hzで使えます。200,380,400,415Vと言う電圧は、50Hz地域で最もよく使われている電圧です。

第2のアプローチは、(・・・・・訳者がその有用性を理解できなかったので、この部分はバッサリ省略します。)

他の電圧

上記の一般的な3つの電圧の他に、440V50Hzなど、他の電圧での要望もあります。さきほどの大ざっぱな理論は、この電圧では普通には適用することができないものであることになります。この例では、特別なモーターを特注するか、サービスショップで巻線を巻き直すことが必要です。いくつかの例では575V60Hzモーターは、480V50Hz、あるいは500Vまでの50Hz電源に使用できます。この場合は、上に述べた考え方が適用できます。

単相モーター

単相モーターは2つのアイテムを含んでいるため、単相特有の問題があります。

・巻線が50Hz周波数と電圧にマッチする必要がある。
・遠心起動スイッチが、そのモーターの起動時、モーターを加速するように正しくセットされる必要がある。

この2つのことが、通常の60Hzモーターを単相50Hzで使用することができなくしています。巻線を巻き直し、起動スイッチを50Hz用に交換すれば、使用することは可能になります。この方法はコストがかさみ、時間を浪費します。

(また宣伝^^;。) 2つめの方法は、Baldorモーターなら可能です。Baldorは1/3~5馬力の50Hz単相モーターを取り揃えているからです。これらのモーターは、50Hzで使用されるよう特別に設計され、110V, 220V両方があります。(5馬力は220Vのみ。)Cフランジが必要であれば、Cフェースマウントタイプの、1425および2850rpmのモーターが1/3~2馬力の範囲で取り揃えられています。通常のモーターをCフランジマウントに変更するための、Cフランジキットも入手可能です。脚つきモーターの台座は溶接されているので、脚なしモーターを得るために脚付きモーターの脚を切ることは現実的ではありませんが、このキットが活用できれば、Cフェースタイプと脚付きタイプ両方のタイプをわざわざ在庫する必要はないでしょう。
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・・・どうでしょう。

Baldorは日本にも支社(代理店?)があり、(少なくとも事業者向けには)引合い・見積もりを受け付けるページもあります。
バルドージャパン
個人消費者に対応してくれるかどうかは分かりません。ワタシが50Hz地帯に転勤になった際はダメもとで泣きついてみましょう(笑)。

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コメント

おはようございます。
ふむふむ、キーはこのBaldorと言うメーカですね。
なるほど、アメリカで50Hzのモータを用意できるなら、これは間違い有りません。しかも3相モータに関しては、200Vと日本の電圧仕様とも合致していますので全く問題なくモータの能力を発揮できます。

三相モータのところはまさに的確に表現されています。以下一言。
説明の中に電圧・周波数比という言葉が出てきましたが、インバータを使用するならこの比が非常に重要になってきます。我々はV/f(ブイバイエフ)と言っています。この数値が大きくなれば、過励磁となり、コイルを焼損する可能性があると言うことで、元々の設計時のV/f値以下で使う事が原則です。

単相モータについては、いろいろ問題があるので(コンデンサについては触れていませんでしたね)、60Hzの単相モータを50Hzで使用するのは止めた方が良いと言うことですね。

まとめとしては、非常にすっきりし満足できるものですね。ありがとうございました。

投稿: 松本 | 2009.06.28 11:25

松本さん

Baldorが特別そうなのか、それとも他社も同様なのか分かりませんが、Baldorの品揃えは良いと思います。TAMA CRAFTさんでのGrizzlyの一件も、最終的にBaldorに対応を引き受けてもらったようです。

楽観的すぎて叱られるかも知れませんが、結局のところ、実際的には多くの場合そのままで問題は起きていませんし、これからもそう起きることはないだろうと思います。(ほとんどの場合、設計余裕でカバーされるんだろう、というのはワタシの勝手な推察です。)

ただし、何も知らないひとに「大丈夫だよ」と根拠なく触れ回ることは今後はしなくなると思います。

もともと、もし「絶対に大丈夫」を最優先に求めるならば、国産製品を日本の機械屋から買うのが一番なワケで。自分でいろいろ調べて、その上で消しきれない部分のリスクは自分で取って、自己責任でトライする、というのが、個人輸入の醍醐味?ではないかと思います。

今回も「こう改造すれば大丈夫」的なセオリーのようなものまでは到達できませんでしたが、おかげさまである程度の指針は示すことができたのではないか、と思います。(ワタシ自身は依然として理屈はほとんど理解できていませんが^^;。)

今回ははいろいろ教えて頂き、勉強になりました。本当に感謝しています。ありがとうございました。

投稿: かんりにん | 2009.06.28 21:50

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