キャッチに関する考察(4)
実は、どっちの方向に進んだらゴールが見えるかよくわからなくなっていましたが、Woodturning.mieのtake@mieさんからコメントを頂き、すこし考え直すことができました。(ありがとうございます。)もう少し駄文を続けます。
まずお詫びと訂正。
前回、『工具の真ん中で削るのが基本的に「安定」である』と書きましたが、これは「間違った削り方」です。
「正しい削り方」は議論の最後に言及しようと思っていましたが、take@mieさんの言うとおり、もっと違う状態で刃が当たるのが「正しい削り方」です。
前回までは、特に横方向の力に着目し、刃の真ん中で削る方が「横方向に持って行かれる力が発生しない」、と書きました。その意味では正しいと思いますが、それが即ち「キャッチが発生しない」ということを意味しない、ということです。
ワタシの書き進め方が間違っていたのは、下記の2点のポイントに集約されると思います。
(1)キャッチの際の「持って行かれる力」は、刃物が引っかかる力(切削抵抗)をまず第一に考えるべきであり、横方向の力の発生は副次的なものである。
(2)工具の真ん中で削るのは、横方向の力に対しても「安定」に見えて実は「安定」でない。
(1)はまた後日考えるとして、話の流れとして先に(2)について考えます。
「安定」に見えて実は「安定」でないとはこれいかに。
前回図示した凸型工具、凹型工具ですが、いずれもど真ん中で削ると確かに横向きの力は発生しません。しかし逆に、少しでも真ん中から位置がずれると、急に横方向の力が発生すると言うことになります。言い換えれば、両側が断崖絶壁の峰に立っているようなもので、すこしでも足を踏み外すと横方向に持って行かれると言う状況です。
自動制御の理論に「ロバスト制御」という考えがあります。その中身は忘れましたが(笑)、本当に「安定」する状態というのは、ある程度の外乱があっても何らかの力が働いて、正常状態に戻してくれる状態を言います。上に概念図を示すように、ある状態からの変位を横軸に、その時のポテンシャルを縦軸にとると、安定な状態は図(a)のようであり、正常状態が最も安定していて、そこからずれると正常状態に戻そうとする力が働き、状態は正常状態であり続けようとします。
しかし、正常状態が図(b)のようにポテンシャル的に底ではない場合は、何かの外乱でどちらかにずれると、状態はあっという間にどちらかに転げ落ちてしまいます。図(c)のように「谷」が片側だけ、あるいはポテンシャル的に平坦ならばまだましですが、これでも正常状態に居続けることは、これ以外の「力」の介入が必要です。
前回説明した工具の真ん中で削るのは、まさに図(b)のような状態ですよね。その瞬間は「準安定」であっても決して「安定」でないというわけです。ということをもっともらしくクドクドと説明してみました。
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