静かな木工(2) - 静かにホゾ穴
「静かな木工」シリーズを勢いで開始してしまいましたが、結局のところ、ルーターの作業をどう代替するかがポイントなのではないか、と考えるに至っています。 と言うわけで、今回のテーマは「静かにホゾ穴を開ける」です。
特に騒音が気にならないのであれば、一般的にはホゾ穴は、手作業ならばゲンノウとノミでしょうね。電動工具ならばルーター。両方とも騒音を気にするならば不可能な工法です。(静かなルーターは以前紹介しましたが、それでも夜中は無理でしょう。)
欧米では、ホゾ穴は、墨付けをした後、ボール盤で中にぐすぐすと沢山穴を開けてからノミで残った部分を整形するという方法が一般的に教えられています。ボール盤は静かで、夜中でも使えます(→参考記事)。しかし、経験のある人なら分かると思いますが、ドリルで穴を並べて開けていこうとすると、あまりくっつけすぎると隣の穴にドリルの先が逃げていってしまい、なかなか綺麗に穴が開かないものです。
この「刃の逃げ」は、フォスナービットを使うことで回避できます。フォスナービットならば、かなりくっつけて穴を開けても刃が逃げず、真っ直ぐ穴が開きますので、これだけでもしつこくやっていけば長穴に近い状態までもっていくことが可能です。
それでも、角穴にしようと思うと、結局隅が丸く残ってしまいます。ノミで四角く整形したいところですが、ここは「騒音防止優先」で、「欧米流の角が丸いホゾ」で我慢することにします。フォスナービットは、ホゾ穴の幅と同じものを使います。
ということで、以下の方法で、「欧米風の角が丸いホゾ穴」を、ごく静かに開けることができます。
順に説明します。以前ご紹介の「超簡単ボール盤延長テーブル」を使います。
(1)セッティング全景(ぶれててスミマセン。)
ボール盤延長テーブルに、ホゾ穴を開けたいところに合わせてフェンスをセットします。
(2)1個目の穴を開ける。
材料をフェンスに当てて、最初の1個目として、一番端っこをまず穴開けします。大量生産する場合は、ストップブロックをクランプするか、写真のように洗濯バサミの親分みたいなクランプでマークしておきます。
(4)2個目の穴を開ける。
2個目は、並べて順番に開けていくのではなく、反対側の端っこを開けます。逆側にも洗濯ばさみをしておくか、テーブルが足りなければテーブル上に線でも書いておいてマーキングとします。
(5)3個目以後の穴を開ける。
3個目以後は、写真では既にくっついていますが、この段階では、できれば穴はくっつけず程良く間を開けて穴開けしていきます。くっつけるとさすがのフォスナービットでも穴がずれ、精度が落ちます。
(6)間をつなげていく。
先に開けた穴と穴の中間を狙うようにして、間をつなげていきます。小さい 材料で押さえづらくがたがたと安定しない場合は、右から左に穴を開けていくよう にするとフェンスに押しつける力が発生し、材料が安定します。但し右から左へと 穴を開けた方がバリが少ないようです。写真ではちょうどこれで穴5個で「5等分」ですが、さらに、その間を狙って「9 等分」するつもりで穴を開け、長辺の凸凹の部分を取ります。
(7)出来上がり。
ホゾ穴の長辺部分はまだ凸凹していますので気に入らなければノミで整形します。が、軟らかい材料ならば、このまま木殺しすれば、いい感じのはめ合いになります。(プロの方が見ればお笑いでしょうが...。)
フォスナービットは、普通のドリルよりはかなりマシですが、細い径のものは軸の剛性が不足で「逃げ」が発生します。私の経験では8mm以下はホゾ穴開けには辛く、オススメは12mm以上です。
言い忘れましたが、金に糸目を付けないならば、角ノミ盤は最も効率的で静かです。誘導モータを使用しているのが大半なので、動作音も切削音も「しゅるしゅるしゅる」と言う感じです。ただ四角い穴を開けるだけの装置ですので、他にもいろいろ「ウィッシュリスト」にある状態では、なかなか買いづらいです。
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コメント
静かな木工
静かにフムフムと、うなずきながら読んでいます(笑)
確かに趣味の木工に最も求められていることは静かな木工なのかもしれません。
簡単に・早く・安く作る事ばかり考えてしまいますが、静かな木工考えないといけませんね。
角のみ静かなのですか・・・ウ~ム静かな電動工具ほしいなあ・・
色々な工夫アイデアが出てきそうです。楽しみに見させてもらいま~す。
投稿: のほほん | 2004.12.16 23:47
のほほんさん こんにちは。
角ノミ盤は静かですよ。デルタのものをさわらせてもらったことがありますが、構造的にはボール盤と同じなので、騒音もボール盤と同じくらいの印象です。
静かな木工シリーズは、お褒めいただいて恐縮ですが、すぐネタ切れしそうな気配です...。
投稿: かんりにん | 2004.12.17 23:03