すっかりご無沙汰しております。
今年は一念発起して、「DIYアドバイザー」という資格を受験しておりました。
この資格は「DIYを実践する人に、用品選択や使用方法などを指導・助言するスペシャリスト」というもので、日本ドゥ・イット・ユアセルフ協会が試験を実施し、資格認定しているものです。試験としては、筆記形式の一次試験と実技形式の二次試験があり、例年、受付が5~6月で、一次試験が8月頃、二次試験が11月中旬(年によって異なる)ということで、受けようと思うとほぼ半年がかりのチャレンジになります。
私はまず過去問集を購入してみたのですが、あまり範囲の広さに目が眩んだのと、最近勉強らしい勉強をしていないので(笑)ちょっと自信がなく、高額だなと思いながらも通信教育を申し込みました。バラ売りもしている動画DVDがセットになっており、少しでも動画的な資料が参考になるかと思ったためです。
通信教育はテキスト 4冊と、「精選問題集」なる問題集が計2冊(学科、実技)、DVD3枚が主な内容で、教材は一度に届きます。添削は4回、分からない箇所は質問を送ることができ、いずれもWebから提出も可能、という内容です。他の教材はともかく、結果的にはDVDは個人的にはあまり必要性を感じませんでした。内容は初歩的で、まったくの初心者なら参考になるかもレベルです。
一次試験は、簡単な記述問題が数問ある以外は全て○×か四択か記号を選ぶ形式のマークシートです。上でも述べましたが非常に範囲が広く、住宅の構造、関連法規、に始まり、木工、金工、電気工作、…と多岐にわたります。私はなんやかんやと一通りのことをかじってきた自信があったのですが、塗料、接着剤の種類とか、蛇口とか水栓の問題、錠前その他の建築系の金具や建具、住まいのお手入れ用品…あたりは非常に苦労しました。
結果としてはおかげさまで一発で合格。で、次は二次試験です。
一次試験の合格通知にちゃっかり二次試験の講習の案内が付いており、二次試験は全く勉強法が分からなかったので、素直に講習を申し込み、受講しました。
二次試験は、過去問を見ると各年度で42問くらいあって、…これ、一人で1日で全部やるの?と思いましたが、仕組みとしては下記の通りです。
(1)実技試験は、3問+面接。いずれも一問10分(面接はもう少し長いかも)。
(2)原則的に1回の試験では、6人1チームになり、4チームが上記の試験を順番に回る形になる。
(3)東京+大阪で、上記の試験を14回行う。 問題の漏えいを防ぐため、各回で試験問題は異なる。
ということで、42問のうち運によってどれかが当たる、と言うことになります。(計算あってますよね。)
講習で先生が言っていましたが、基本的に
木工から1問、
電動工具から1問、
補修から1問、 (壁紙貼りとか水栓、建具の分解、組立てなど)
という出題バランスになっているのだとのこと。
ここは木工ブログなので木工について詳しく触れると、板材を半分に切って、簡単な仕口(相欠き継ぎ、3枚アラレ組、ダボ継ぎあたり)を一箇所だけ作りなさい、という感じの設問がほとんどです。材料は軟らかい針葉樹で杉だと思います。もちろん製材してあります。道具は持ち込みはNGで準備されたものだけを使います。
ここでまず違和感があるのが道具で、例えば3枚アラレ組(この試験の界隈では「3枚組み手」と呼ばれています)の問題で用意されるのは、主なもので両刃ノコ、玄能、ノミ、指金、巻尺、エンピツ、あとはクランプなどの固定具です。趣味で木工をかじっていると、
墨付けに罫引きとシラガキを使いたい!
あと、できれば指金よりスコヤを使いたい!巻尺要らないから直尺欲しい!
8寸目くらいのノコ欲しい!
切断面の仕上げにカンナ使いたい!
と、結構モヤモヤします。
それよりも違和感があるのは墨付けですね。他の問題に比べて、木工は皆さん時間内に終わるのが難しいらしく、特に慣れてないと墨付けに時間がかかるのだとか。で、講習では、板厚は実物を使って写せ、とか、2本並べて線を引け、とかいろいろテクニックを伺いましたが、木工的にはちょっと首をかしげるのも何点かありました。一番疑問を持ったのは、第一基準面、第二基準面…の考え方は全く無視なのです。製材がある程度信用できればそれで良いので、まあそれでも良いのかなと。
あと、時間が10分しかないので仮組みしながらネチネチとノミで追い込んで…みたいな時間はなく、ノコは一発で墨線を狙うくらいの気迫が必要です。あまり精度は問われないようなので、それで良いようです。
いくつか採点ポイントがあるとのことで、講習で伺った限りでは、
・指金をきちんと使えること。(材に引っかけて使う。間違って裏目を使わない。)
・ノコギリの縦引きと横引きを使い分ける。
・刃物を安全に使えること。
・設問の通り、クランプやバイスを使って固定すること。(設問に書いてある)
・時間内にできること。
という感じらしいです。
出来映えについてはただ一点、「手で持ち上げて外れなければOK」なのだそうで、キツめに作って最後は木殺してはめろと教わりました(笑)。(杉(多分)なのでミリ単位で木殺しが可能。)
私は本番は、
1問目が木工で、包み打ち継ぎを隠しクギで留める問題、
2問目が電動工具で、電動ドリルドライバーで鬼目ナットを仕込んでボルトで木材を締結する問題、
3問目はアクリル板やゴム板、タイルやら合板やらを「適切な」接着剤で接着する問題、
と比較的素直な問題が当たりました。
木工の時は隣のブースの「あと2分!」を、自分のブースと勘違いして焦りましたが、もう1回自分のところの「あと2分」が聞こえて「ガクッ」となりつつ、何とか完成できました。
面接は、3名前後でのグループ面接で、簡単な自己紹介(名前、職業など)を聞かれた後は、どうやって勉強したか、なぜ受験したか…などの質問が主で、あまり知識面を問うことはなく、基本的な受け答えを見ているようでした。
で、結果は1週間くらいで届き、こちらも一発で合格でした!
ここからは受験を通しての感想ですが、総じて思ったのは、まず、DIYアドバイザー試験の言う「DIY」とは、定義からしてあくまでも「住まい」を補修、改良していくことに特化しているということです。ちょっと一般のDIYの認識よりは狭義の定義をしているような気がします。
また残念ながら、「資格のための資格」になっている感が結構あり。
住宅の知識も木造軸組工法に多くのページを割いており、今の住宅の比率を考えるとどうなのかなと。出てくる建具も「円筒錠」とか、最近実際にはほとんどお目にかからないような古いものしかありません。
接着剤にしても、「△△と××を接着するには○○系接着剤を使う」とかを延々と暗記するわけですが、今どきホームセンターに行っても「○○系接着剤」という表示はなく、各社の商標あるいは「△△用接着剤」という表示だけなので、実際には○○を覚えていなくても困ることはないのです。
用語についても、「この試験だけに使われる用語」みたいのが結構ちらほらする気がします。上述の「3枚組み手」もそうですが、その他の部品、用具についても、一部はホームセンターに「予習」として見に行っても、その名前のものを見つけることができませんでした。
また、出題の可能性を考えると恐ろしい量のことがらを勉強しなければならないはずなのですが、特定の出題パターンがあり、結局は過去問を(理屈抜きでも)ひたすら暗記していけば何とかなるという試験になっています。
あと、「この作業にはこれを使う」、みたいなことを淡々と暗記するのはどうなのかな、とも思いました。基本的に私自身は、DIYは「こんなことをしたいけど、この道具とこの材料でこんな風にできそうだな」とかの試行錯誤が本質だと思っていて、「ウマく行けばOK、ダメなら懲りずに再トライ」の世界だと思っているので。まあ、アドバイザーという立場上、模範解答を持っておくべきということは理解しますが、DIYはもっと堅苦しくなく自由であるべきではないかな、と。
特に、受験料、講習料、登録料がそれぞれ高いのでそう思えるのかも知れませんが…。)
最後に、受験に際しての勉強法です。
一次試験は、面接などで聞いていると、過去問をひたすらやったと言う人が多かったです。私自身は通信教育を受けましたが、今振り返ると過去問だけでも行けたと思います。通信教育は結構高額で、値段程度の価値はあるかというとちょっと疑問ですが、私は今までいろいろかじっていたからそう思えるのかも知れず、全く何も知らない初心者の方ならば価値はあると思います。
二次試験については、確実に受かろうと思うなら講習を受けるのが一番確実だと思います。通信教育は、実技のテキストは1冊含まれてますが、添削やその他のサービスは受けられず、あくまで一次中心という感じがします。
ホームセンターなどでは、職場で先輩が勉強会みたいな形で教えてくれるところもあるとのことですが、全くの門外漢なら、やはり二次は講習を受けるのが早いのかなと。但し、木工も何も全くしたことがないと言う方だと、ちょっとシンドイかも知れません。但し、合格者の方のブログなどを見ていると3門中1問くらいはアラララ…な結果でもけっこう合格しているようなので、合格率は低いですが、合否基準自体はさほど高くなく完璧を目指さなくても合格はするんじゃないかと思います。
受験を通して感じたのはやはり自分はものを作ったり(壊したり)するのが好きなんだなと言うことと、この歳になっても知らないことを習って、やってみて、できた!というのはうれしいものだなと感じた次第です。
おしまい。
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